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異常気圧症候群(Dysbarism)

異常気圧症候群は圧外傷と減圧症に大きく分類されます。ジェット旅客機が20,000〜40,000 ftを飛行する場合、機内高度は5,000〜7,000 ftに調整されていますが、何らかの原因で急減圧が生じた場合に起こりうる病態である減圧症についても理解しておく必要があります。


  1. 病態生理
    1. 圧外傷

      腔内気体の圧力とその外部の圧力とに相対的に差が生じることにより起こる障害
      減圧により、組織の圧迫・進展などが起こる結果、疼痛が生じたり、内部の組織が障害を受けて炎症を起こします。中耳炎、副鼻腔炎、腹痛、歯痛といった病態が上空の環境により発症し得ます。そのため上気道炎、耳鼻科的疾患、消化器疾患、歯および歯周疾患はあらかじめ治療をしておくことが必要です。

    2. 減圧症

      空気の約80%を占める窒素ガスは血液に溶け込んでいますが、気圧が下がると、窒素ガスの溶解度が減少するため気泡化し、血流障害をおこします。それにより酸素等体内で必要な因子の不足が発生し種々の組織障害が起きます。潜水夫が水中という高圧環境から海上に浮上して起こす潜函病(ケーソン病、潜水病)がよく知られ、機内与圧の維持された民間航空機では起きにくいですが、地上と比較して気圧の低い外界環境を飛行するため理解しておく必要があります。
      1気圧下では、60Kgの体重あたり1-1.5Lがとけ込んでいます。
      また脂肪組織には血液の5-6倍の窒素ガスがとけ込むため肥満の人は症状が出やすい傾向があります。
      フライト直前のスキューバダイビングは避け、最低24時間は空ける必要があります。

  2. 減圧症
    1. 症状

      病態から、後述する低酸素症の症状が重なります。
      関節症状Bends:組織や血管の圧迫による関節痛
      呼吸・循環器症状Choke:胸骨下の圧迫感・咳、胸痛・動悸、呼吸困難
      皮膚症状Creeps:むずむず感、痒み・痛み。減圧症の前駆症状として注意。
      中枢神経症状Staggers:頭痛・運動障害・意識障害等

    2. 悪化因子

      外傷・炎症などの関節疾患、肥満、薬物・アルコール、
      スキューバダイビング、運動、寒冷、低酸素

    3. 処置

      航空機の下降、100%O2吸入、保温・安静による気泡化の防止
      専門的治療:高圧酸素療法

    4. 減圧症の予防

      機内与圧
      悪化因子の除去
      以下参考(民間航空機では行わない)
       脱窒素:飛行前に30分間100%酸素を吸入する
       加圧呼吸・与圧服
       低圧チャンバーでの訓練

低圧チャンバー イメージ
低圧チャンバー

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